| 農業法人の設立の方法
農業法人を設立する場合、法人の形態や構成員をどうするかがポイントです。
 会社法人にするか、 農事組合法人にするのか、また、構成員を家族だけの同族法人にするのか、仲間と一緒に法人を作るかなど、法人形態の選択には、家族や仲間、地域の事情や資金などの状況だけでなく、将来、どのような農業をしたいかという将来的な視野から決定すべきでしょう。
 
 株式会社と農事組合法人の比較は下記の表のとおりです。
 商行為その他の営利行為(株式会社)と共同の利益増進(農事組合法人)のように事業目的が異なり、議決権のほか、農事組合法人には雇用人数の制限(構成員の2/3未満)もあります。
 
                              
                                
                                  |  | 株式会社 | 農事組合法人 |  
                                  | 目的 | 商行為その他の営利行為 | 共同の利益増進 |  
                                  | 出資 | 制限なし(1株均一) | 制限なし(1口均等) |  
                                  | 構成員 | 1人以上、(ただし、農業生産法人となる場合には、農地法の要件を満たす必要がある) | 農民等3人以上 |  
                                  | 議決権 | 出資1株につき1議決権(ただし、定款で別段の定め可) | 1人1議決権 |  
                                  | 役員 | 取締役1人以上(社員以外も可) | 理事1人以上(組合員のみ) |  
                                  | 常時従事する構成員・理事の過半は60日以上の農作業に従事すること |  
                                  | 配当 | 出資株数に比例(出資配当の制限なし) | 利用分量・従事分量・出資分量の3種類 |  
 1.農業法人設立の流れ
 
  
 
 2.役員の要件役員の過半数は、原則年間150日以上、その法人の農業及び農業関連事業に従事すること
 役員の過半数のさらに過半数は、法人が行う農作業に年間60日以上従事すること
 
 3.事業内容の要件
 主たる事業が農業であること
 (総売上の50%以上が、農業及び農業関連事業であること)
 
 
 「農業関連事業」とは、下記の事業です
 
 ①農畜産物を原料または材料として使用する製造または加工
 ※椎茸を生産する法人が、自己の生産した椎茸に加え、他から購入した昆布も原料として、複合出汁の製造を行う場合など
 
 ②農畜産物の貯蔵、運搬または生産を行う法人が、自己の生産した作物に加え、他の農家が生産した作物貯蔵、運搬または販売を行う場合など
 
 ③農業生産に必要な資材の製造
 自己の農業生産に使用する飼料に加え、他の農家等への販売を目的とした飼料の製造を行う場合など
 
 ④農作業の受託
 水稲作を行う法人が自己の稲の刈取りに加え、他の農家等の稲の刈取りの作業の受託を行う場合など
 
 ⑤農村滞在型余暇活動に利用されることを目的とする施設の設置および運営
 並びに当該活動を行う者を宿泊させることなど当該活動に必要な役務の提供
 観光農園や農園利用型市民農園、農作業の体験を行うための宿泊休養施設、施設
 内の農畜産物等の販売施設などの運営など
 
 ⑥農業と伴って行う林業
 
 ⑦農業に係わる共同利用施設の設置または農作業の共同化に関する事業
 (農事組合法人の場合)
 ・農事組合法人は、農業と農業関連事業以外の事業はできませ。
 ・農事組合法人以外の法人は、売上げの過半に至らない限度で、農業および農業
 関連事業以外の事業も行うことができます
 
 上記の要件を満たした法人を設立した後、農地法第3条の申請を行います
 つまり、株式会社などが農地法第3条の申請をして許可を受けると、農業生産法人になるということです
 ただし、農地法第3条の許可を受けて農業生産法人になれたとしても、別の機会に別の農地を売買又は賃借するときには、「農業生産法人の要件にかかわる事項」なども提出してまた農地法第3条の許可申請をすることになります
 これは、既存の個人の農家が新しい農地の権利取得をしようとするとき、その度ごとに農地法第3条の許可申請をするのと同じ理由です
 
 
 4.注意事項農業生産法人の要件は、農地の権利を取得した後も継続して満たさなければなりません
 要件を満たさなくなると、最終的には法人を閉鎖しなければならないことになります
 
 要件確認のため、次の措置が設けられています
 
 ● 農業委員会への報告-事業年度終了後3ケ月以内に事業状況の報告
 (農地法第十五条の二第一項、農地法施行規則第十三条の二、第十三条の三)
 
 申請書記載事項
 一 法人の名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名
 二 法人が現に所有し、又は所有権以外の使用及び収益を目的とする権利を有して
 いる農地又は採草放牧地の面積
 三 その事業年度に行った事業の種類及び売上高
 四 法人の構成員の氏名又は名称及びその有する議決権
 五 構成員からその法人に対して権利を設定又は移転した農地又は採草放牧地の面
 積
 六 構成員の法人の行う農業への従事日数
 七 承認会社が構成員となつている場合には、その構成員の株主の氏名又は名称及
 びその有する議決権
 八 農地法第二条第七項第二号ト法第2条第7項第2号トに掲げる者が構成員とな
 っている場合は、その構成員が法人から供給を受ける物資若しくは提供を受け
 る役務の内容又はその構成員が法人の円滑化に寄与している状況
 九 理事、業務執行権を有する取締役の氏名及び住所並びに農作業への従事日数
 十 その他参考となる事項
 
 添付書類
 一 定款の写し
 二 組合員名簿又は株主名簿
 三 承認会社が構成員となつている場合には、その構成員が承認会社であることを証
 する書面及びその構成員の株主名簿の写し
 四 農地法第二条第七項第二号トに掲げる者が構成員となつている場合には、その
 構成員とその法人との間で締結された契約書の写しその他のその構成員が同号
 トに掲げる者であることを証する書面
 五 その他参考となるべき書類
 
 
 ● 農業委員会の勧告及びあっせん
 要件を満たさなくなるおそれがあるとき、法人に対し必要な措置をとるべきことを勧告
 できます
 
 
 
 
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