はじめに・・・・・ |
八重山のガイドブックに紹介されているのは、白い砂浜、海・・・海・・・海・・・ 確かに僕も海遊びは大好きだが、実は、山歩きも八重山の魅力の一つなのだ。「八重山」って言うぐらいだからね。 「八重山」という地域名は、この海域に浮かぶ八つの大きな有人島を遠くから眺めると「山々が八つに重なり合って」見えるというところに由来するらしいが、実際には山らしい山があるのは石垣島と西表島だけだ。 当然、トレッキングポイントも、自ずと石垣島と西表島に限られてしまう。しかし、亜熱帯性気候に属する八重山には日本国内でも「ここにしか生息しない」という動物や昆虫、植物などが数多くみられ、八重山のトレッキングフィールドには内地と一線を画した南の島ならではの風景が広がっている。 石垣島にある「於茂登岳:おもとだけ」は標高526mしかないが、これでも沖縄県の最高峰で、これより高い山は沖縄には存在しない。 そういう意味では「登山」という概念は八重山ではまず必要ない。比較的簡単に登れてしまう山ばかりなので、登頂することを目的とするよりは、その道程における観察などに重点を置くことが大切だろう。 ここは八重山らしく「のんびり」行きたい。 内地で普段、観葉植物としてショップなどで結構な値段を付けている植物が普通に野良生えしていたり、天然記念物や絶滅危惧種に指定されている生物などに、思いがけず出会ったりするものだ。植林などはほとんど行われていないため、フィールドに一歩足を踏み入れれば、そこはまさに亜熱帯のジャングルなのだ。 さあ、亜熱帯ジャングルのトレッキングに出かけよう! |
亜熱帯のジャングルと言っても、山道が整備されている場所へはそれほどの重装備は必要ない。 出来れば長袖のシャツ、長ズボン、運動靴に帽子といったスタイルで、バッグは背中に背負えるデイパックなどが便利。ただし、いくら軽装でOKと言ってもビーチサンダルなどは避けた方がいい。 (特に「島ぞうり」は鼻緒が切れやすいぞ) 山中で1泊以上するときの必需品は、テント・寝袋・キャンプ用具などの他、忘れてならないものが「蚊取り線香」とナイフ・カットバンや消毒剤などの軽医薬品だ。 「西表縦断トレイル」のような本格的なルートに分け入る際は、事前に下調べし、それなりの装備で望まないと危険だ。 (スポーツサンダルで走破した強者もいるようだが・・・。ヤマビルもうじゃうじゃいるぞ) |
八重山諸島の中心島で、南部には市街地が広がるが、北部は人口も少なく、亜熱帯の大自然が色濃く残っている。ここではポピュラーなフィールドを紹介するが、他にも、前嵩、.屋良部岳、桴海於茂登岳、嵩田林道、白水水源地等々見所は沢山ある。 |
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★上写真をクリックすると大判写真が見れます 標高282mの山頂部がポツンと尖った特徴的な山。 通称「野底マーペー」として親しまれている。「マーペー」というのは女性の名前で、かつての強制移住にまつわる悲恋の「マーペー伝説」として語り継がれている。 登山道が整備されていて約40分程で登頂出来るが、赤土の露出した急な勾配が数箇所あり、雨の降った後などは滑りやすいので注意が必要。 前述の於茂登岳の登山道より傾斜がきつく、標識の数も少ないが、比較的楽に登頂できる。山頂部は岩がむきだしになっていて樹木で視界を遮らないため、360度見渡すことができ、その眺望は石垣島で一番と言えるだろう。 山頂部に「マーペー伝説」の説明がある |
市街地から車で10分の距離にある沖縄県最大の県営公園。 入場料は無料で、開園は9:00〜21:00。 トレッキングとは言い難いのだが、バンナ岳がまるまる公園になっており、亜熱帯の植物が数多く植えられており、つり橋、蝶園、トイレ、展望台などの設備も充実しているので散策にはもってこいだ。 バンナ公園Map 所々に展望台が設置されていて、竹富島や西表島などの八重山諸島が一望でき、晴れた日には東シナ海に沈む夕日も見物出来る。 日本列島に最後の夕刻がせまる |
「東洋のガラパゴス」と形容され、天然記念物のイリオモテヤマネコをはじめとする様々な珍しい動植物の宝庫である。 島の半周を道路が走っているだけなので、島全体がトレッキングフィールドと呼べるかもしれない。だから、ここで紹介されていないコースも無数に存在するのだ。 |
★上写真をクリックすると大判写真が見れます 最近はカヌーや観光船でヒナイ川を上り、そこから滝に向かってトレッキングすることが多いが、ここでは、始めから徒歩で行く方法を紹介する。 このコースは大潮の干潮時に行くのがおすすめだ。(泳いで渡る強者もいるのだが)干潮時をはさんで3〜4時間で往復するつもりで計画しよう。 船浦の海中道路から干潟へ降り、干潟を渡ってヒナイ川の河口付近の白い浮玉が掛かった徒歩入口を目指す。 ここから先はヒルギ林の中を進み、同じような入口が何ヶ所かあるので見落とさないよう注意する。 やがて、ジャングルになり、足元は悪くなる。途中でヒナイ川を渡河し、滝上と滝下への分岐点出る。滝上へは右へさらに30分、滝下へは左へ15〜20分ほどで到着。滝の上からの眺めは絶景だ。大雨の後などは水量が増し、滝の上に行くのは危険な場合もあるので充分な注意が必要だ。 滝の上からの眺めは絶景! |
★上写真をクリックすると大判写真が見れます 浦内川の観光船で8Km上流の軍艦岩まで行き、そこから2つの名瀑を見に行くポピュラーなコース。 軍艦岩から約30分ほどで「日本の滝100選」の一つ、「マリュウドの滝」に到着する。時折、重装備の人を見かけるが、これは「西表縦断トレイル」を目指す人なので、滝を見に行くだけなら軽装で構わない。 山道が整備されているのでお手軽に歩けるコースだ。 マリュウドの滝から約10分ほど歩けばカンピレーの滝に到着する。 滝には簡単に近づけるが、見た目以上に流れが激しいので水遊びをする際は注意が必要。帰りの船の時間もきっちりと把握しておこう。 山道でよく出会うキノボリトカゲ |
★上写真をクリックすると大判写真が見れます 八重山のトレッキングルートの代表格とも言えるコース通称「西表縦走」、全行程は約20kmだ。 このルートに分け入る際には、単独入山は不許可で、営林署と警察に「入林届」を提出しなければならない。このルートでは、過去に多くの遭難者を出しており、「観光のついでに」という軽いノリではチャレンジしない方がいい。 事前に十分な下調べをし、綿密に計画を立てて、天候などのコンディションが悪いときは控えたほうが無難である。 亜熱帯の原生林のジャングルに深く分け入る「西表縦断路」は、もともと国有林を管理するために使っていたルート。 前述の浦内川上流の軍艦岩からイタジキ川、第2山小屋跡、中間広場、第1山小屋跡を経由して東部の大富または古見に抜ける。ただし、古見に抜けるルートは、少し分かりづらいのでおすすめ出来ない。 約8時間の行程で日帰りも可能だが、テントを担いで行き、途中でキャンプ泊することをおすすめする。 いくら亜熱帯といっても夜は冷える場合があるし、雨が降ることもあるので野宿は危険である。野営する場合は必ずテント持っていこう。 局地的に蚊が大発生することもあるので、蚊取り線香も必需品だ。食料は万が一に備え、充分に持って行こう。飲料水に関しては、沢の水を飲むことも可能で、脱水症状に注意し充分に水分補給をすること。 ※西表島はキャンプ場以外でのキャンプは全面禁止だが、縦走の場合は黙認されている コースは、個人的には、軍艦岩を出発地とし、第1山小屋跡で1泊してから大富に抜けるコースをおすすめする。 ※大富出発だと、軍艦岩から観光船乗り場まで行く船の最終運航時間を気にしなければならない カンピレーの滝の上流部に「縦断道入口」があるが、目立たないので見落とさないよう注意が必要。 ここから先は今までより道が険しくなり「道なき道」とまでは言わないが、本格的な山道になる。ただ、400m毎に標識が設置してあるし、ビニールテープのマーキングなどもあちこちにあるので、注意深く進めば、迷うことはないだろう。 ルートを外れたと思ったときは、必ず元の場所に引き返し再スタートしよう。(そのまま進むと深みにはまるぞ) 「縦断路入口」から約1時間半ほどで「イタジキ川出合」に着く。縦走ルートはこの川を渡河し4〜5mの崖をロープで登って行くのだが、ちょっと寄り道し、イタジキ川に沿って30分ほど進めばマヤグスクの滝に着く。 この滝は、ガイドブックなどではあまり紹介されていないが、地元では人気のある美しい滝だ。時間的に余裕のある人は是非立ち寄ってみよう。 「イタジキ川出合」から約2時間ほどで「第1山小屋跡」に到着。テントが約10張出来るほどのスペースがある。 「第1」も「第2」も山小屋跡となっているが、実際には山小屋の建物は跡形もない。 この「第1山小屋跡」が1日目の宿泊場所だ。 所々の休憩の段階で気づくと思うのが、ヤマビル(山蛭)はこのルートにつきものだ。 最初のうちはせっせと引き剥がすのだが、そのうちどうでも良くなるものだ。 (慣れた人はヒルに満足いくまで血を吸わせ、その後で剥がす。こうすると跡が残らないらしいがおすすめしない) 興味のある人は、如何にしてへばり付くのかじっくりと観察してみると良い。 2日目。 「第1山小屋跡」から出発し、途中の「大富・古見分岐点」を大富方面に進路をとり、「縦断道大富口」までは約2時間ほどで抜けられる。 ここから先は道幅の広い「大富林道」で、未舗装のガレ道が続き、途中の「仲間川展望台」からは広大な仲間川のマングローブの林などが眺められる。 約2時間ほどでゴール! |
石垣島や西表島の山間部は、やはり人間の入らぬ自然の中だから、トレッキングするときに注意すべき危険動物たちも生息しているので、代表的なものを紹介しておく。 もっとも、内地の山でさえ、マムシとか熊とかの危険生物は当然居るので、八重山の山間部には「リュウキュウイノシシ」以外の大型獣は居ないから、むしろ安全なのだ。 |
サキシマハブ 八重山諸島に分布する毒蛇で、大きいもので全長120cm体重700gにも達する。毒の強さはハブより弱く、八重山では年間で40名前後の人が咬まれ病院で治療するが、死亡例はここ10年以上はない。夜行性。 |
リュウキュウイノシシ 内地に生息している「ニホンイノシシ」の別亜種。体重は最大でも60Kg程度にしかならず、ニホンイノシシの半分程度。八重山諸島の中では西表島に生息頭数が多い。 食用として珍重される。 |
ヤマビル 山歩きの人の出入りが多い山道や、吸血対象の動物が通る獣道に多く見られる。雨上がりは特に多い。吸血時に痛みを感じさせないモルヒネに似た物質を出すため、吸血されていてもなかなか気付かない。 |
イワサキカレハ(幼虫) 八重山では「ヤマンギ」と呼ばれ恐れられている。隠蔽擬態しているものもいるので見つけのくい。毒性が強く、トレッキング中に木の枝を掴む時は必ず何かいないか確認しないと危険だ。 |
トビズムカデ 北海道を除く日本列島に広く分布する。日本最大級のムカデ。八重山にも数多く生息している。毒性はそれほど強くないのだが、咬まれるとひどく痛むので注意が必要。 |
マダラサソリ 体長6cmほどで、八重山諸島と小笠原諸島に生息する。人家にも侵入し、人間を刺すことがあるが、毒性は弱く、今までに死亡例はない。 |
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