12月の八重山

南の島のクリスマスと冬の海遊び

このページは、毎月1回、その月の八重山を紹介していく歳時記のページです。
不思議の国、八重山の歳時記は内地のそれとはちょっと違うのです。

              椰子の木のX'masイルミネーション

12月の八重山歳時記

12月と言えば、X'mas、この南の島には雪も降らず、もちろんトナカイも居ないけど、それでもX'masはやってくるのです。
見よ! このX'masイルミネーションは椰子の木とシーサーとX'masイルミネーション、実にオシャレではないか。

沖縄で気象観測が始まってから「雪」が観測されたのはただ1例、1977年に久米島で観測されたが、完全な雪ではなく正確には「みぞれ」だった
石垣島では、2005年3月23日の明け方に「ひょう(雹)」が降ったことがあり、起きると庭一面が真っ白で驚かされたことがある



シーサーと椰子の木のクリスマスには当然、雪はない これでも普通の民家です 風俗店じゃありません 家の正面にはクマノミのイルミネーションが・・・・・
石垣島のクリスマスツリーは椰子の樹やガジュマルの樹だ。
この季節になると「日航八重山」などのホテルの椰子の樹やガジュマルの樹などに一斉にX'masイルミネーションが点けられる。モミの木や杉・桧などの樹木は八重山にはない、亜熱帯気候の八重山ではこんな北方系の針葉樹は植えても育たない。
   

   暖かい南の島だから、暖炉や煙突はないので、サンタはシーサーの乗っかった赤瓦の屋根から家の中には入ってこれない。
亜熱帯の島石垣島には煙突は数えるほどしかなく、沖電の火力発電所、製糖工場、ゴミ焼却場、火葬場程度しか煙突を備えた施設がないのだ。(30年ほど前までは、バインの缶詰工場があったが、それもフィリピンからの輸入パイ缶に押されて姿を消した。)

家のエントツを知らない八重山の子供たちに煙突から入ってくるサンタの物語を信じてもらうのは・・・・・それは無理というものです。

だから、八重山では、X'masプレゼントはサンタが運んでくるものではなく、親が子に送る冬の贈り物で、小さな子供でもそれは知っているのだ。もともとは仏教徒でもキリスト教徒でもないこの島の島人たちは、単に「12月の祭り(イベント)」としてX'masをとらえているので、天○教教会の入口にX'masイルミネーションが堂々と点けられていたりもして、それはそれでなかなか楽しい。


八重山の冬の海遊び


 
  ウムズナー(ウデナガカクレダコ)

八重山の冬の海遊びと言えば「ウムズナー」獲りだ。
「ウムズナー」というのは、学名Abdopus aculeatus、和名ウデナガカクレダコといい、沖縄では身近にいる「イイダコ」に似た小さなタコだ。
ウデナガカクレダコは、亜熱帯域から熱帯の西太平洋海域にかけて広く分布していて、遠浅の干潟や砂浜、岩の割れ目を住処としている。
沖縄では、これまでアナダコOctopus oliveriという種類と混同されてきたが、最近の研究で、琉球列島に生息しているのはA.aculeatus種であることがわかり、「ウデナガカクレダコ」という和名が新たにつけられた。
2007年日本動物分類学会

マダコ科カクレダコ属(新称)Abdopusの2種、カクレダコ(新称)A. abaculus (Norman and Sweeney, 1997) とウデナガカクレダコ(新称)A. aculeatus (d'Orbigny, 1834) の日本からの初記録:金子奈都美・窪寺恒己

このウデナガカクレダコは、沖縄本島ではンヌジグワァ、八重山地方ではウムズナーやムンチャーと呼ばれ、古くから親しまれてきたタコだが、けっして食用として市場に出回ることはなく、地元の人々が「冬の遊び」として獲り、もっぱら家庭でチャンプルーや煮物として調理される。小浜島などでは「むーちゃん」と愛称で呼ぶ。

タコの警戒心の薄らぐ夜間に、遠浅の砂地の海で干潮時を狙って海が干上がったくるぶしほどの深さのところへ入って獲る。穴に潜ろうとするタコと駆け引きしながらじっくり獲るのが面白く、八重山では人気がある冬の海遊びだ。
 
このウムズナーを茹でて酢味噌なんかで食べたり、炒め物にしたりすると、実はなかなか美味いのだ。

 
ウムズナーは八重山の冬の味覚の代表格だが、生息数が少ないのか魚屋では売っていない。食べたければ自分で自給自足(獲る)するしかないので、僕はこの季節(11月〜翌2月頃)にはよくウムズナー獲りにでかける。

12月の大潮の夜の海岸はウムズナー獲りの島人(しまんちゅ)たちで賑わう。干潮をはさんだ前後3時間ほどが、この漁の時間で、岸から見ると、沖に点在する島人の懐中電灯の漁火が、なかなか幻想的だ。
懐中電灯や蛍光灯ランプなどの灯り・モリや手網などが、この漁の一般的なアイテムだが、ちょっと変わったウムズナーの獲り方をする人もいる。

そのひとつは、煙草の汁を使ったダマシ漁だ。この漁をする人たちは、タコ穴に煙草の吸殻の出し汁(煙草を水に一晩漬けて黒くなった水)を注いで、穴から出てきたやつを獲る。
多分、タコがタールやニコチンに酔ってフラフラと巣穴から出てくるのだろう。

膝まで海水に浸かって投げ縄のように長い紐の先に取りつけた仕掛けを遠くに投げ、一定の速さでじわじわと紐を引っ張ってくると、仕掛けのイモガイにタコがついてくるという変わった獲り方もある。


瀬戸内海などにも、大潮の干潮時の夜に潮の引いた海に入って鍬(クワ)一つでアナダコや寝ているベラなどを巣穴ごと掘り起こして獲るというなかなか荒っぽい漁がある。これは仕事としての漁ではないので、瀬戸内地方の漁師たちは、こんな遊びの漁のことを総じて「慰み:なぐさみ」と呼ぶのだ。

場所が変わってもうみに海人(うみんちゅ):漁師たちはみな海が大好きだ。
四方を海に囲まれ、一年中、仕事で海に居るくせに、それでも「これでもか!」と言わんばかりに海で遊ぶ、こればかりは内地の漁師も八重山の漁師たちも変わらない。海というところはとても不思議な魅力に満ちている。

そして、魚たちと人間との知恵比べは、ほとんどの場合、人間様のほうに軍配が上がるのが常である。

娯楽の少ない島だから、こんな単純な海遊びに大人や老人が真剣に興じる。
こういう遊びの世界には、必ず「名人」と呼ばれる人たちがいて、僕の10倍くらいは獲る。でも、そんな名人に限って粗末な道具に粗末な格好をしていて、ちょっと目にはとても「名人」には見えず、普通の人と区別がつかないものだ。
そういう名人たちのバケツを覗いて、山ほど入ったウムズナーを見せられたときは・・・非常に悔しい!


潮干狩り

潮干狩りも八重山の冬の遊びの代表格で、冬の大潮の日は、潮干狩りに興じる人が多い。

沖縄では、こんな二枚貝のことをみんな「アサリ」と呼ぶが、本当はアサリではなく、「ヒメイナミガイ」や「リュウキュウマスオ」「アラスジケマン」左の白い貝は「イソハマグリ」などの沖縄の貝たちだ
でも、ここは八重山風にみんな「アサリ」と呼んでしまいましょう
どうせ食べるんだからね(*^_^*)


不思議の国八重山の12月のお話です。