このページは、毎月1回、その月の八重山を紹介していく歳時記のページです。
不思議の国、八重山の歳時記は内地のそれとはちょっと違うのです。
【11月の八重山歳時記】
花火と言えば夏の夜の風物詩、日本各地では、お盆を中心に7〜8月の夜空を花火が彩り浴衣を着た見物人などが短い夏の夜を楽しむのが普通だ。
八重山にも小規模な花火大会があるが、本土のそれとは違って、立冬も終わった11月初旬に開かれる。
秋の花火は「石垣島まつり」という市が主催する祭りの最終日の夜に打ち上げられる。今年の石垣島まつりの花火大会は、祭りの最終日10/17日の夜(20:45−21:00)で、およそ200発の花火が打ち上げらた。
「花火大会」と呼ぶのは考えさせられる規模だが、日本最南端の街の秋の花火は、それなりになかなか立派、まつりの最終日の午後8時45分頃になると、八島町の埋立地のほうから「ドドーン」と最初の祝砲が街中に響きわたる。小さな街なので、石垣島市街地からなら、どこからでも花火は見える。僕は毎年、この音を聞くと家の二階のベランダに跳んで出る。
たった15分そこそこで終わってしまう「花火大会」だが、古びた赤瓦の屋根越しに見る南の島の秋の花火は長かった八重山の夏の終わりをとてもオシャレに彩るのだ。
この花火の夜、若い女性の見物人の多くはまだ浴衣姿で、秋の宵の街を闊歩する。花火大会にはやっぱり浴衣、浴衣と言えば花火・縁日・盆踊りなど夏には欠かせない風物詩だが、この南の島では秋の風物詩なのだ。
僕はこの季節はずれの花火を見ると「そろそろ八重山の夏も本格的に終わりだな」と毎年思う。
八重山の秋は、とても不思議な季節だ。
新北風(ミーニシ)が吹く日はなかなか寒く、長袖のジャケットが欲しくなったりもする。かと思えば、太陽が燦燦と輝く風のない日には外気温が30℃近くあって汗ばむ。11月も中旬を過ぎれば、さすがにビーチもガラガラになるが、海に入れば海水温は25℃もあるのだ。
いったい夏なのか秋なのか、さっぱり分からない・・・・とても不思議な季節なのだ。
※新北風(ミーニシ、アラニシ) 9月中頃から吹き始める強い北風
僕は乗ったことはないが、福岡発の東南アジア行きの夜間飛行便に乗れば、鹿児島−沖縄本島−宮古−石垣と次々に「街の灯」が見え、石垣を過ぎるとフィリピンのミンダナオまで700kmほど、飛行機は灯りひとつない真っ暗な南洋の海上を飛ぶらしい。
南へ向かうパイロットにとっても乗客にとっても、石垣の街の灯こそ最後の国境の日本の灯だ。
飛行機からも石垣の花火は見えるかな?
2005年 最近5日間の海水温(単位:℃)
観 測 地 点 |
午前10時の観測値 |
11月上旬の平年値 |
10月29日 |
10月30日 |
10月31日 |
11月 1日 |
11月 2日 |
江差 (北海道) |
17.3 |
16.7 |
16.2 |
16.1 |
15.8 |
14.0 |
宮古 (岩手県) |
17.5 |
17.2 |
17.1 |
16.9 |
17.1 |
16.0 |
小名浜 (福島県) |
18.6 |
18.7 |
18.4 |
18.0 |
17.8 |
17.5 |
御前崎 (静岡県) |
20.6 |
20.0 |
19.4 |
19.4 |
19.4 |
18.9 |
浜田 (島根県) |
20.6 |
20.3 |
19.5 |
19.8 |
20.2 |
19.5 |
石垣 (沖縄県) |
27.1 |
26.8 |
25.9 |
25.3 |
25.3 |
25.3 |
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※資料出所:気象庁 |
八重山の紅葉
八重山の樹木には紅葉するものが少なく、まともな「秋の紅葉」は望めないが、ハゼ類をはじめ何種類かは紅葉する樹もある。沖縄のハゼは「リュウキュウハゼ」という種で、櫨紅葉(はぜもみじ)とも呼ばれる。
もうひとつの紅葉樹である「モモタマナ」は代表的な八重山の紅葉樹で、12月も下旬になれば大振りの葉を真赤に染める。でも、葉の大きさが20cmもあって、これは「紅葉(こうよう)」としては風情に欠ける。20cmの大ぶりの枯葉がドサッ・ドサッっと散る。やっぱり秋の紅葉はヒラヒラ落ちたほうが絵になる。
モモタマナの紅葉
リュウキュウハゼの紅葉
11月の初旬になれば秋の花ヒガンバナも咲くが、八重山のヒガンバナ(鍾馗水仙)は何故か黄色なのだ。
この花はヒガンバナの仲間で、沖縄各島・九州・四国の一部に分布する中国や台湾を原産地とする花、ショウキズイセン(鍾馗水仙)だ。
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学名:Lycoris traubii
和名:ショウキズイセン
鍾馗水仙 |
八重山には赤いヒガンバナは咲かないので、八重山人(やいまんちゅー)は「ヒガンバナは黄色」と思っているようだが、内地の彼岸花は「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」と呼ばれ、秋を代表する野の花として内地では広く定着している赤い花だ。
秋の水稲の収穫後の田んぼの畦道にこの赤い花が燃えるように群れて咲く。日本人のこころの風景のひとつだ。
曼珠沙華 は、サンスクリット語で「天界に咲く花」という意味の仏教用語だそうだ。
曼珠の意味は「愛楽=仏の教えを乞い求めること」で、曼珠沙華は仏が説法を行った時に天から降ってきた花の一つとされていると言う。
曼珠沙華咲いてここがわたしの寝るところ 種田山頭火
こんな赤い彼岸花が恋しくなって、僕は、今までに二回、内地から彼岸花の球根を取り寄せて庭に植えたが、結局、新芽は出るけど育たず、そのうち腐ってしまうのだ。同様に内地から取り寄せた桜(ソメイヨシノ)も、紅葉(モミジ)も同じ運命をたどった。
僕の家の庭に植えた内地から持ってきた「金木犀(キンモクセイ)」の苗木は、なんとか2年は枯れずにいたが、花はまったく咲かず、秋になっても、けっしてあの甘く怪しい芳香を辺りに漂わせることはなかった。
自然というやつは実に上手く出来ている。
ここは亜熱帯、日本(ヤマト)の気候とは根本的に違うのだ。金木犀が戸惑って花を咲かせない気持ちもよく分かる。
冬のホタル
不思議の国、八重山の秋の山にはホタルも飛ぶ。
「オオシママドボタル」という日本最大種のこのホタルは、これから12月末にかけてが見ごろだ。
ホタルの大きさは、1.5〜1.8cmもあって、ほとんど点滅せず、大きな緑色の光で八重山の山間部の潅木の繁みの中や高い梢の上を実に悠々と飛翔していく。
昨夜は家の中にこのホタルが入ってきた。電灯を消してみると、しばらく室内を発光しながら飛び回っていたが、やがて天井にとまって発光しなくなったので、外に出してやった。そっと手に取るとゲンジボタルの2倍くらいの灯りで光るのだ。
僕は、このホタルを10匹ほどカゴに入れ「蛍の光」で本を読んでみたことがあるが、ホントに文字が読める、なかなかスゴイやつなのだ。この季節に八重山に来た人は必見のホタルだね。
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