石垣島西部に広がるマングローブ林と湿地帯からなる名蔵アンパルが2005年11月8日付で、ラムサール条約に登録された。
アフリカで同日開催された「ラムサール条約第9回締約国会議」で、「国際的に重要な湿地に係る登録簿」に掲載され、沖縄県内では名蔵アンパルと慶良間諸島海域が新たに追加、沖縄県内の締約湿地は計3カ所となった。

環境省は専門家による候補湿地の選定を行った上で国内法による保護措置の適用、関係自治体の賛意の確認、条約湿地の指定など登録のための条件整備を進めてきた。今回新たに国内20カ所の湿地が登録され、既登録を含め33カ所となった。

名蔵アンパルの湿地は名蔵川河口部の干潟とマングローブ林を中心とした157ヘクタール。亜熱帯地域の多様な自然環境がまとまって存在しており、水鳥、八重山特有の猛きん類など多様な鳥類が生息しているほか、底生動物、甲殻類など多様性も高い。

  

地 図
番 号

調査区
番 号

市 町 村 名

地    名

      

調査年度

1989

22

69

石垣市

アンパル

都道府県名

沖縄県




1.地形・地質
名蔵川の河口域に広がる潟湖干潟。標本区は潟湖内のマングローブ林をのぞく約30haの干潟部分である。名蔵川のほかに3本の排水路が流れ込んでいる。底質の大部分はあらい砂で、干潟下部ではレキが混じる。名蔵大橋および名蔵小橋の周囲をのぞき、海岸線は自然海岸である。
2.植生 干潟内には約14haにおよぶマングローブ林がある。







1.底生生物
甲殻類38種、貝類37種、その他4種の計79種が報告されている。これは同島の天然記念物指定の吹通川・宮良川河口域のマングローブ林と比べて圧倒的に多い。
干潟下部ではマスオガイ類、アラスジケマンガイ、シレナシジミなどの二枚貝類とシオマネキ類やその他のカニ類がみられ、中・下部ではネジヒダカワニナ、ウミニナ、コメツキガニ、ミナミコメツキガニがみられた。海岸線近くではいたるところにオキナワアナジャコの巣穴があった。







県内では漫湖とならぶバードウォッチングのフィールドである。石垣島での繁殖が確認されている20科36種のうち、14科23種がアンパルでも繁殖を行うものとみられており、重要な繁殖地であるといえる。
アンパルでは年間を通じて22科71種の野鳥が観察され、これは石垣島で観察される野鳥をすべて含んでいる。季節的には、冬季にカモ科、シギ科の渡り鳥がときには千数百羽渡来し、夏期は大型のシギ類が多い。
キンバト、オオクイナ、カンムリワシなどの貴重種もみられる。




アンパルに流れ込む排水の影響で生物相が単調化したり、赤土やシルトが堆積するなど、環境が悪化しているという。さらに、名蔵川国営灌漑排水事業計画や白水ダム建設計画もあり、今後の保護対策が望まれている。

資料出所:沖縄県                          

第4回自然環境保全基礎調査 干潟・藻場調査報告書(干潟生物調査)から抜粋

【ラムサール条約】
「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が正式名称。湿地特有の動植物、特に水鳥の生息としての湿地の保全や適正な利用を義務づけている。1975年に発行、日本は1980年に加入した。